Stadiaが及ぼすエンジニア・プログラミング界隈への影響を考察

19/03/31 17:25:17     19/03/31 18:20:49

STADIA

そもそもStadiaとは(概要から展望まで)

StadiaとはGoogleの開発したゲームストリーミングサービスです。

注目されているポイントとしては、対応デバイスが多様であることと、リアルタイムでオンライン共有できることです。またボタン一つでYouTubeにアップロードすることが可能で、YouTubeでそれを見たユーザーがゲームに参加することも可能です。

YouTubeに出現したボタンを押すだけでゲームをプレイできるので、StadiaはGoogle、ゲーム業界、ゲームファンだけでなく、YouTubeに対しても革命を起こしたと言えます。

サーバー側で処理を行う

各ゲーム業界への影響は後述しますが、Stadiaはサーバー側でほとんどの処理を行うため、クライアント端末に負荷が掛かりにくいという特徴があります。つまりクライアント端末のスペックが低くても高度なゲームを楽しめることになり、エンジニアにとってはサーバー側のプログラミングがより重要になります。

そこまで単純ではありませんが、単純化するとゲーム内のデータ管理やグラフィック処理はサーバー側で行われ、クライアント側はそれを映し出すスクリプト処理だけで済みます。

現在はマルチプラットフォームやオンラインがピックアップされていますが、ARとのコラボも期待されています。将来的には仮想現実に近い形でオンラインゲームができるようになり、Stadiaがその土台となるということです。

すぐにそのレベルまで持っていけるとは言えませんが、土台自体はあるので、拡張現実の技術が上がればゲーム内で現実のように交流できる、アニメでよくある設定のような世界観ができるかもしれません。

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Stadiaが普及することによって考えられる影響

Stadiaのサービス開始は2019年を予定されていますが、マルチプラットフォームでオンライン共有できるとなると当然既存のゲーム業界にも多大な影響を与えます。

クラウド型のゲームは今後増える?

Stadiaがサービス開始されれば、Chrome環境のみでクラウド型のゲームが楽しめることになります。今もクラウド型ゲームの参入障壁が特別高いわけではありませんが、Stadiaの一般化によってより手軽にクラウド型ゲームができるようになるでしょう。

特に一番今後考えられることとしては、コンシューマーゲーム業界のクラウド進出です。すでにコンシューマーゲームの有名企業がソーシャルゲームやオンラインゲームに進出していることは知れ渡っていますが、今後もその傾向は加速し、クラウドゲームが主体になっていく可能性すらあります。

詳しくは後述しますが、Stadiaの影響でハードもソフトも物理的なものを収益源にするのは難しくなっていきます。すでにハードウェアやゲームソフトの売り上げは落ちていますが、Stadiaのサービス稼働は決定打になると思われます。

Stadiaの影響でコンシューマーゲーム業界が参入してくる可能性は高く、ゲームとまったく関係ない業界もStadiaを利用したサービスを開始するかもしれません。

少なくともゲーム機が終わると各所から指摘されているので、挽回を図ったコンシューマーゲーム業界の進出は明らかです。

 

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ソーシャルゲーム業界への影響

Stadiaの発表からソーシャルゲーム業界の株価は平均的に値上がりしており、企業にとっても株主にとってもゲームユーザーにとっても望ましい状況です。今はソーシャルゲーム全盛の時代で、コンシューマーゲーム業界から主導権を奪ったと言っても過言ではないでしょう。

そして日本のソーシャルゲームは世界的に評価が高く、アニメ業界と並んで日本経済を下支えしています。ソーシャルゲームはスマホやタブレットでダウンロードしてプレイするのが基本ですが、Stadiaによってよりマルチプラットフォームにプレイできるゲームを開発しやすくなるでしょう。

ソーシャルゲーム業界がStadiaを利用してゲームをリリースしても、おそらくもっとも多くなるのはスマホからプレイするユーザーです。その点では既存のソーシャルゲームとなんら変わりはないのですが、パソコンやゲーム機からも同じゲームを楽しめることになります。

本格的なゲーマーの取り込み

そうすると、パソコンのオンラインゲームやゲーム機でのゲームのみをプレイする本格的なゲーマーも取り込める可能性が出てきます。具体的にソーシャルゲーム業界がどのようなゲームを開発するかはまだわかりませんが、たとえば既存のソーシャルゲームよりも本格的なゲームをリリースしても人気が出る可能性があります。

今まではスマホ用のゲームということで比較的簡単に遊べるものが多かったですが、対象デバイスを特定しないのであればより本格的なゲームをリリースしやすいです。

スマホでプレイする人が増えれば良いですが、そうでなくてもパソコンやゲーム機からプレイする人が多ければ収益になります。また今まで通り気軽に遊べるゲームをリリースしても、パソコンやゲーム機から本格的なゲーマーが参入してくれる可能性があります。

わざわざスマホからゲームをするのは嫌だが、パソコンからできるならちょっと気分転換に気軽にできるゲームをやってみようかな、といった心理になる可能性があります。

ソーシャルゲーム業界にとってStadiaはターゲットの範囲を広げてくれるツールなので、結果的に今まであったようなゲーム以外のゲームに冒険しやすくなります。

もちろんゲームを開発するにあたってターゲット層や主なターゲットデバイスは決めますが、そもそもの範囲選択の幅が広がり、なおかつ仮にターゲットを外しても狙ったところ以外で人気が出る可能性が高くなります。

 

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コンシューマーゲーム業界への影響

Stadiaの影響をもっとも色濃く受けるのは、ある意味コンシューマーゲームかもしれません。まだStadiaはサービスについて発表されただけの段階ですが、すでに早くも任天堂やソニーの株価は下落しています。

一般のゲームユーザーにはまだStadiaはそれほど認知されていませんが、一部のゲーマーや株主はすでに目を付けています。ハードウェアへの需要がなくなっていくことを見越して動いており、需要がなくなれば必然的に供給量も減っていくでしょう。

ゲーム機はおろか、ゲーミングPCすら不要になっていくと考えられます。しかし、最終的にコンシューマーゲーム業界がどのような影響を受けるかは未知数です。

コンシューマーゲーム業界の対応は

ハードに対する需要が減ってそこの売り上げが減っていくことは確実なのですが、そこからコンシューマーゲーム業界がどのような対応を取るかは未知数です。

コンシューマーゲーム業界の今後は厳しいという声もあれば、収益モデルが変化するだけで生き残りの策はあると考える声もあります。今のところのおおよその予測としては、コンテンツを柔軟に提供して広告収入や課金収入をメインに持ってくる、子供向けにオリジナルのハードウェアを開発する、といった策が考えらます。

今までにもソーシャルゲームの台頭などによってコンシューマーゲーム業界は危機的な状況にさらされていましたが、結果的にソーシャルゲームに乗り出して新たな道を切り開きました。

このような前例を考えると、コンシューマーゲーム業界はStadiaに合わせてビジネスモデルを変化させていくと思われます。

Stadiaによって新たに生まれそうな需要

Stadiaがゲーム業界全体に多大な影響を与えることは明白で、ゲーム内のネットワークがより活発になります。そして上で説明した通りGoogleはAR技術の開発にも着目しているため、いずれは仮想現実の世界で他人と交流できる環境ができるでしょう。

これはより高度なゲームに対する需要ですが、別の角度から見るとStadiaには収益絡みの需要が発生すると考えられます。具体的には、Stadiaを通しての物販や広告に関する需要です。

StadiaはYouTubeに投稿したりボタン一つでYouTubeからゲームに参加する機能がありますが、YouTubeと言えば動画内での物販収益や広告収入が発生します。

既存のソーシャルゲームにも広告自体はありますが、YouTubeと連動しているわけではありません。Stadiaは今までのゲームよりも圧倒的に広告を入れやすく、動画に飛ばしても見てもらえる確率が高くなります。

これによってゲームとはまったく関係ない業界からStadiaに参入してくる可能性もあり、プロゲーマーとのコラボなども増えるかもしれません。プロゲーマーはスポンサーを見つけてお金をもらいながら実況できるようになるため、より良い環境になると考えられます。

 

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これからのゲーム業界の動きに対してエンジニアがしておくべきこと

Stadiaがリリースされたからといって、ほとんどのエンジニアにはあまり影響はないでしょう。2019年にサービス開始される国に日本は入っていないので、なおさら影響は少ないと考えられます。

またStadia以外にもAI化や自動化の影響があるため、エンジニアに対する影響は単一のものではありません。ゲームエンジニアを含めエンジニアの需要は今後大きくなる、逆に需要はなくなる、といろいろなことが言われています。

何が正解かわからなくなっている人も多いかと思いますが、一つの傾向としてよりアイデア重視になっていくと考えられます。

ツールが不十分な時期

たとえば一昔前まではJavaを書くにも総合開発環境や便利なエディタはなくて、テキストにべた書きするような状況でした。

実際に動かしてみればエラーかどうかはわかりますが、具体的になぜエラーが起こっているのか、ログで正確に指摘してくれるわけではありません。ネット上に情報も少ないので、自力でエラーの原因を考え続けることになります。

一日中試行錯誤した結果単純ミスだけだったり、逆に簡単には思いつかないような落とし穴にはまっているようなことが多々あったのです。ツールが充実していないということは、その分エンジニアには高い集中力と技術力が求められます。

ミスなく完璧にこなさなければシステムは動かず、そのためには精度の高いプログラミングと完璧なロジックが求められます。そこから徐々にツールが進化し、今ではプログラミング初心者でもツールの力を借りてコーディングミスを修正したり、ロジック自体もかなり自動化されています。

プログラマーの需要は

現在AI化やプログラミングの自動化が進んでいますが、基本的にはかつて開発環境が急速に進化したときと同じようなことが起こっているのです。開発環境の進化が進んだときもプログラマーは不要になる、誰でも簡単に開発できる時代になる、といったことが言われていましたが、結果的にプログラマーの需要自体は右肩上がりに伸びています。

需要自体は増えているのですが技術的なハードルは下がったので、待遇的には格差が広がりました。今後AI化、プログラミングの自動化が進めば、また同じようなことが起こると考えられるでしょう。

世の中のシステム化が進む分プログラマーの需要は今後も増え続けますが、技術的なハードルはより一層下がります。そのため、極端に言えばプログラマーの数は必要だがアルバイトや学生が練習でやるような仕事だ、といった感覚になっていくかもしれません。

昔はテスト工程も高度な技術がないとできない環境でしたが、今は新人やアルバイトの仕事といった感覚が根付いています。下流工程ほどこのような傾向が強いので、プログラマーの需要は伸び続けるものの、待遇は平行か下がっていく可能性があります。

もちろん高度な技術力を持っていて唯一無二の存在であれば待遇が下がることはありません。ただし技術的なハードルが下がれば下がるほど逆に高度な技術力は求められなくなるので、「いかに便利なツールを使いこなしてアイデアの投影されたサービスを提供するか」といった点が重要になります。

IT業界に限らない

これはIT業界に限った話ではなく、どの業界でも同じです。たとえばアパレル業界でも昔ほど裁縫など実際に手を動かす技術は重宝されなくなっています。できるに越したことはないのですが、オフショア等で安く賄えます。

しかしだからといって経営者やデザイナーに需要がなくなったかというとそうではなく、逆にアイデア次第で安く大量生産できるようになっています。IT業界でも単純な開発技術のハードルは下がっていくため需要はあるものの待遇が良くなるとは考えにくいですが、安価にシステムをリリースしやすくなっていることは間違いありません。

ゲームでもその他のシステムでも同じですが、AIやプログラミングの自動化をいかに使いこなすか、人間にしかできないアイデア力をいかに駆使するか、といったことが重要になります。

プログラミングが単純化されればされるほど技術だけでなくツールを使いこなす力とサービスを考える力が大切になるので、時代の流れによって損をする人と得をする人が出てくるでしょう。

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