起業の状況、事業の開始 – 42歳で起業したおっさんの末路

19/08/26 15:53:08     19/08/26 15:58:47

私は起業をしている。但し、とても小さい事業だ。

起業、という言葉は、今の私の状況を表現するにはカッコ良すぎる言葉だ。だからあまり使いたくない。しかし、法人を持ち事業を行っているのは事実だ。だから、短い自己紹介をするときには、バツが悪いなと感じながら、起業している、と表現する。

実態は、単なる個人開発者だ。自分ひとりで、気持ちが向くままにプログラムを書き、リリースし、いくばくかのお金を得ている。

もともと、大学を卒業してから長い間、私は会社員プログラマーとして仕事をしていた。

今は会社員を辞めて独立しているが、副業として自分のサービスを販売し始めてからも、数年間は会社員を辞めなかった。おそらく私は、起業家の中で最も弱腰な部類に入るだろう。

運営しているサービスは2つ。「ストリクス」と「ヤクパト」だ。

私のこの一連の連載では、主に「ヤクパト」について書いていく。

しかし、私は「ヤクパト」の前に「ストリクス」を作り、小さな成功をおさめていた。ヤクパトを作り始めたのも、ストリクスの成功がきっかけとなった。この記事では、ストリクスと、ヤクパトの事業開始について簡単に話そう。

ストリクスについて

私の今の収入の柱は、上記のストリクスだ。このサービスは、不正PPCという種類の違法なネット広告を取り締まっている。業界団体である「日本アフィリエイト協議会」の公式サービスとしても採用された。

日本アフィリエイト交流振興会のこと

私は、最初からプログラマーとして活動していたわけではない。

最初は、普通の副業アフィリエイトブロガーとして活動していた。プログラムではなく文章を書いて、小遣い程度のアフィリエイト収入を稼いでいた。

小さい金額だったけれど、きちんと法律やモラルを守った上でお金を稼ぐことができていた。私がそのスキルを得たのは、日本アフィリエイト交流振興会のおかげだ。

インターネット広告業界では、違法なことや、モラルに反したことをした方が稼ぎやすい。そして、違法なことで成り立っている経済規模の比率は、おそらく他の業界よりもかなり大きい。法律を守っていることを馬鹿らしく感じてしまうことは、私もよくある。

日本アフィリエイト交流振興会は、アフィリエイト初心者をすくい上げ、悪の道に入らないように誘導しながら、稼ぎ方も教えていた。私も、すくい上げられたうちのひとりだ。恩を感じずにはいられなかった。

日本アフィリエイト交流振興会は次第にメンバーが多くなり、数年の後に、任意団体である日本アフィリエイト協議会が発足した。

笠井さんについて

日本アフィリエイト協議会の代表理事は、クロスワーク株式会社の笠井北斗さんが務めている。

この笠井さんは、変人と言っていい。

笠井さんは、今の年齢は30代後半だろうか。私より少し若かったと記憶している。アフィリエイトの世界を知り尽くした人だ。

おそらく、お金を稼ごうと思えばいくらでも稼げる人だと思う。しかし笠井さんは、ほとんど利益が出ていないように見える会合を定期的に開催していた。初心者アフィリエイター向けの無料講習会や、ネットショップ向けの勉強会などだ。

それらの会合で笠井さんの信用が高まり、結果的に仕事がたくさん舞い込んでいる面もあるのだろうとは思う。しかし、それにしたって、こんなにたくさんの無償奉仕をする必要はないだろう、と、私としては感じる。

たぶん笠井さんは、アフィリエイト業界全体の健全な発展とか、日本の経済、世界の経済とかに重きを置きながら行動しているのだろう。

それらが重要であることは理解できるし、多くの人はそれが正しいと考えるだろう。しかし、いち個人としてそれらを最優先して行動できる人は、ほぼいない。普通の人は、それらも大事だと感じながらも、自分の利益を優先するものだ。

笠井さんはおそらく、アフィリエイト業界全体の健全な発展を、本気で最優先にして行動している。普通の人にはできないことだ。だから、私はこの人を変人だと思う。

笠井さんが募ったボランティア

2013年の春、笠井さんがボランティアを募った。不正PPCサイトを見つける作業のボランティアだ。

インターネット広告業界は不正や犯罪など、黒い部分が大きい。その黒い部分のひとつが、不正PPCサイトだ。

私は違法広告に悔しさを感じていた。違法広告にアフィリエイト報酬のパイを奪われていることが悔しかった。また、その違法広告に対して自分が無力であることも悔しかった。

同時に、笠井さんにも大きな恩を感じていた。だから、このボランティア作業に参加した。

そのボランティア作業は、手作業で不正PPCサイトを見つけるというものだ。

その手作業を少しやってみた。自分でやってみると、この作業は、プログラムで自動化できると感じた。

私は1週間ほどで最低限のプログラムを組んだ。自分のボランティア作業を効率化して不正PPCサイトを調査し、情報提供した。この時に作ったプログラムが、ストリクスのコアな部分だ。

公式ツールとして採用、最初のお客さん

その後も、私は勝手に、ストリクスの改良を重ねた。時間を経て実績が認められ、ストリクスは日本アフィリエイト協議会の公式ツールとして採用された。

公式ツールとして採用されたことで存在を知られるようになり、いくつかの企業から、ストリクスを買いたいという打診を受けた。私はSaaS型サービスとしてそれを提供し、お金を得た。

これは、私にとって大きな成功体験だった。自分の技術で作ったものが、直接、企業に売れたのだ。

最初のお客さんになってくれた企業へ、契約のために打ち合わせに行ったときのことは、よく覚えている。10階か15階ほどのビルを一棟丸ごと借りている大きな会社だった。

このデカい会社が、私個人のサービスを買うのか。特大の嬉しさと、失敗したらどうしよう、という底深い恐怖が混ざり、感情を抑え込むのが大変だった。打ち合わせの場では、自分としては平静を保った顔をしていたつもりだけれど、もしかしたら挙動不審な行動を取っていたかもしれない。

ストリクスで得たお金は、家族を養うには程遠い金額だった。しかし、自分の技術でも世の中の役に立つものを作れるのだ、という強い実感を持った。

このとき、この企業にストリクスを販売し始めたときも、笠井さんは間を取り持ってくれていた。

私がこのストリクスを作ったのは、笠井さんからのボランティア依頼を受けたからだ。笠井さんの情熱を感じたからこそ、私はストリクスを作った。笠井さんは私の人生を、充実した方向へ、大きく動かしてくれた。

2017年の講演

2017年12月。私は、日本アフィリエイト協議会のイベントで、不正PPCに関する10分ほどの短い講演を行った。

聴衆は200人ほど。アフィリエイターだけではなく、広告主側の立場の人、アフィリエイトサービスプロバイダー、マスコミ関係者など、さまざまな立場の人が集まる大きな会合だ。

私は、日本アフィリエイト協議会へ提供しているストリクスの実績データから、不正の状況について報告する内容を話した。

講演を依頼してもらえるということは、ストリクスは業界内でそれなりの評価を得られたということだろう。私は、安堵と達成感を得た。まだ不正PPCサイトはたくさん残っているけれど、このまま時間をかけてストリクスを運営し続けていけば、潰していけるだろう。

登壇依頼を受けた時から、この仕事には区切りがついた、という感情が産まれていた。壇上で話をしている最中に、その感情が確信へと変わっていくのを感じた。不正PPCについて壇上で語りながら、頭の中では、次に何を作ろうか、と考えていた。

JAROさんとの会話、薬機法違反サイトの存在

講演が終わったあと、何人かの方々が私に名刺交換を求めてくれた。10分とはいえ講演者ということで、私に興味を持ってくれた人がそれなりに居たのだろう。

その中に、JAROの方がいた。私と同じ40歳くらいの世代だと、「ジャロってなんじゃろ?」というCMが流れていたことを記憶している人も多いだろう。正式名称は日本広告審査機構。そのJAROに所属している方だった。

数分、会話させて頂いた。JAROさんとしては、薬機法違反サイトについて強い課題認識を持っているとのことだった。いくつかのニュースサイトの広告欄をポチポチとクリックしながら、内容をチェックしているそうだ。

薬機法。面倒な法律だ。

薬機法とは、健康食品や化粧品、医薬品の広告表現について規制している法律だ。この法律は複雑怪奇であり、条文も曖昧な表現になっている。薬機法について素人である私としては、薬機法に関する仕事はやりたくない、と感じていた。

しかし、そんな素人の私でも、これは間違いなくダメなやつだろう、と感じられるような広告が、健康食品や化粧品の分野にはたくさんあった。法律のことはわからないけれど、何らかの規制や契約に違反した広告の比率が高いだろう、という印象は強く持っていた。

JAROさんと会話したことで、私のその認識が強化された。それを解決することはおそらく価値がある、と、強く信じることができるようになった。

市場調査

会合が終わり、自宅に帰ったあと、すぐにごく簡単な市場調査をした。

ニュースサイトの下に並べられている広告のカタマリは、「アドネットワーク広告」や「レコメンドウィジェット広告」と呼ばれている。PCを立ち上げ、Googleの検索窓に「アドネットワーク広告 市場規模」と入力し、検索ボタンを押す。

MarkeZineのページが検索結果に出た。それらの市場規模は、年間148億円だ。デジタルインファクトという企業が調査したらしい。

次に私はいくつかのニュースサイトを開き、ニュース記事の下にある広告のカタマリをクリックして調べた。私が100個ほどの広告をクリックして「これは明らかにウソだろ」と感じた広告は10個だった。10%が違法広告ということだ。

単純な計算をする。市場規模148億円 * 違法広告比率10% = 14.8億円。極めて粗い調査だが、仮にこの調査結果を信じるとすれば、この違法広告の犯罪市場規模は年間14.8億円ということになる。

BtoBの商売ならまた別なのだろうけれど、14.8億円は、個人が相手にする金額としては莫大な金額だ。

複雑怪奇で、曖昧で、でも黒い部分が明らかに大きい世界。その黒い部分の大きさは、14.8億円。

わからない部分はとてつもなく大きかった。しかし、私が解決する価値はあると感じた。

ヤクパトの事業開始

次の私のシゴトは、これにしよう。

プログラマーと、広告運用の現場で働く人との間には、保有知識に広く深い溝がある。それぞれの道でプロであっても、もう片方の知識を持っていないことがほとんどだ。

私は自分を、その観点で珍しい存在であると自認している。プログラマーとしてもインターネット広告業界人としても2流であるけれども、両方の知識を持っていることは事実であり、その点では珍しい存在であるはずだ。

この問題を解決するには、プログラマーとしてのスキルと、インターネット広告業界の知識、両方が必要であるように感じた。

問題の大きさも、BtoB企業が手掛ける商売としては小さい。私のような小さな個人が解決するべき課題のように思えた。

だから、私がこれを解決する。もちろん、できるかどうかはわからない。しかし、状況を考えれば、私より適任な立場の人は、それほどいないはずだ。

私は、解決までに具体的にどんな作業が必要かを考え始めた。こうして、「ヤクパト」の事業が始まった。

人気記事

編集部おすすめ記事

この記事を読んだ人はこんな記事を読んでいます

案件探しやフリーランスになるための相談する