個人事業主が法人化するタイミングは?まだ早い?分岐点は?しちゃった方が得?
18/07/08 16:01:16 19/05/04 16:52:12
個人事業主にも青色申告など様々な節税対策が許されている一方、法人化すると更に税金面で優遇されると聞きます。しかし法人化すると新たに生じてくる義務もあります。
例えば社会保険の支払いは「一人社長」でも義務化されています。
個人事業よりも法人化したほうが得なのでしょうか?また、法人化のベストタイミングはいつなのでしょうか?
目次
個人事業主・法人のメリット・デメリットとは?
下記の表は個人事業主と法人の各種違いをまとめたものです。これを参考にしてそれぞれのメリット・デメリットを挙げてみます。
個人事業主のメリット・デメリット
個人事業主であることのメリットを挙げると
- 開業が簡単
- 登記した事業目的に縛られず自由にビジネスができる
- 所得税の申告だけなので簡単
- 赤字を3年間繰り越しできる
といったところです。
個人事業主のデメリットは、
- 社会的信用の低さ
- 所得税が累計課税制で売り上げが上がるほど所得税があがる
- 節税策が少ない
- 社会保険には入れない
などになります。
個人事業で可能な節税対策では不十分になってきたり、法人化して更に事業を発展させたいなら、法人化に踏み切った方が得なようです。
法人 | 個人事業主 | |
起業までの時間 | 定款認証、登記などの手続きに費用がかかる | 基本的に税務署に届け出を出す以外、登記などの必要がないため費用がかからない |
事業の縛り | 登記した事業目的の範囲のみでしかビジネスができない | 制約はなく自由に商売ができる。 |
社会的信用 | 会社組織であれば、社会的信用が比較的に高い。 大手企業と直接取引口座を開きたいケース、消費者をターゲットとして広く通信販売をするケース、金融機関から資金調達をするケースなどで会社の方が信用を得やすくなることが多い |
社会的信用は会社に比べ低い。 |
税率 | 法人税は基本的に税率が一定。 ある程度の所得が見込める場合には会社を設立したほうが、低い税率が適用され節税できる可能性が高い |
所得が増えるほど、所得税の税率が上がる。そのため、利益が多くなると、会社よりも税金が高くなる可能性がある |
税務申告 | 法人税、住民税、事業税の申告など、個人事業主と比較して複雑な手続きが必要となる | 所得税の申告だけで問題ない。計算も簡単 |
節税 | 節税策が豊富にある。 例えば、会社の場合は、役員の住居を会社名義で借りて住宅としたり、役員の生命保険に加入したりすることで節税することも可能 |
節税策が会社に比べ少ない。 例えば、事業主の給料が経費扱いされない、家族の給料を計上するのに制限があるなど、会社に比べて必要経費の計上に制限がある |
受給できる年金 (老齢) |
基礎年金のほか厚生年金も上乗せされる(老後に受け取る年金額が比較的多い) | 基礎年金のみ(老後に受け取れる年金額が比較的に少ない) |
銀行口座 | 審査が比較的厳しい | 審査が比較的易しい(ただし屋号をつける場合は審査が厳しくなる) |
事業主(株主)の責任 | 有限責任 ※合資会社の一部社員、合名会社の社員は無限責任 |
無限責任 |
社会保険 | 健康保険に加入 | 国民健康保険に加入 |
法人のメリット・デメリット
それでは法人化するメリットを見ていきましょう。
節税対策になる
個人に課される所得税は累進課税制です。従って所得が増えるほど税額が上がっていき、最低は5%ですが最高税率は40%にもなります。ここで、法人税と個人の所得税の課税対象を表した図を引用します。
こうしてみると、法人の方が税金面で優遇されているのが分かります。
個人事業主の場合は、所得(売上-経費)に対して所得税や住民税が課せられます。最終的な所得税と住民税の合計最高税率は、なんと55%!個人の場合儲けの半分以上が税金になってしまうケースもあるというのです。
法人税率も利益の額によって上がりますが、そこに資本金も関係してきます。法人税率の計算は実に複雑で単純に個人事業と比べるのが難しいのですが、それでも個人事業より節税対策がしやすいといえます。
一般的には、年間所得が500万円を超えるなら法人化した方が節税できるといわれています。
有限責任にできる
個人事業では、経営悪化による未払い金や借入金、税金滞納分などは個人の負債になります。しかし、株式会社や合同会社の場合は、個人保証による借入以外は出資金の範疇での責任を負えば良いのです。
社会的信用が上がる
法人は、採用においても顧客との契約においても個人事業より有利です。契約を交わす際も、大手は取引先の資本金や従業員数などを稟議し取引先として承認するか否かを決定します。法人でないとバッターボックスにも立てないケースも多いのです。
社会保険に加入できる
法人化するとたった一人でも社会保険に強制加入になります。(個人事業では特定業種で5名以上雇っている場合のみ)社会保険は国民健康保険や国民年金よりも補償が手厚いためむしろメリットとして考えても良いでしょう。
法人化にもデメリットはあります。
- 赤字でも税金の支払いが発生。法人住民税の均等割(年間7万円)と社会保険。
- 法人税などの事務手続きが煩雑化
- 税理士や公認会計士への報酬は少なくても10~20万
これらの支払いが負担でないなら、法人化してももちろん問題はありません。
法人化の目安は利益が500万を超えたら?
先ほども法人化したほうがいい目安(利益の損益分岐点の目安)として、年間500万円程度の利益が出るならと申し上げました。また会社設立時にも、諸々の手続き費用で約20万~25万円程の経費が発生します。その支払いが無理なら、個人事業主のまま経費を計上して対策したほうが良いでしょう。
またシステム開発やコピーライティングなど経費がでない業種の場合、法人化をどう考えるべきでしょうか。
経費が出ない業種の場合は、法人化して社長として役員報酬を受け取り、給与所得控除を利用するという方法があります。ただし、役員報酬の設定額に注意しましょう。原則的には途中変更が難しいためです。
業種によっては売上の変動が激しい場合がありますが、この場合も要注意です。ガクンと売上が下がったときに「会社は赤字なのに個人の所得には高い税金がかかる」という事態に陥ってしまうので注意しましょう。
法人税の申告書作成は税理士に任せるべき?
個人事業主の場合、確定申告は自分でする方は多いでしょう。日々の記帳さえきちんとしていれば、申告書の作成は意外とスムーズにできますし慣れれば難しくはありません。
個人事業主から法人化しても、法人税の確定申告は自分でやろうと思われる方も多いようです。しかしなかなかそうはいきません。法人化すると会計や申告が実に複雑化しますし、これが法人化のデメリットの一つでもあります。
個人事業主時代には聞かなかった言葉が申告書に並んでいたりします。また申告書の枚数も増えます。プロの手を借りないとどうすれば良いのか分からない事がたくさん出てくるのです。
法人税の申告は、税金についての専門知識がないと作成できない箇所も多いですし、多くの時間や労力が必要となる作業です。法人税については、会計ソフトとは別に申告用のソフトが必要になります。
そのうえ法人には、税務署が厳しくチェックの目を光らせます。これは一社あたりの納税額も多く、公的な存在である法人には仕方のないことです。
また、間違った申告書を提出しても大変なことになります。後の税務調査で誤りを指摘されてから追徴課税を納めることになると、額によっては会社の経営自体に影響を及ぼすこともあります。
こう考えると、いくら個人事業主時代に自分で申告を済ませていたとしても、法人化したら税理士や会計士などの専門家を頼ることは必須だといえるでしょう。
社会的信用や補助金・助成金の数は法人が圧倒的
今、ベンチャーやスタートアップを助成しようという世の中の気運は高まっており、行政としても様々な補助金・助成金制度を準備しています。助成金の数は全国で3000種にも上るとのこと!全員がその恩恵に与れるわけではなく選抜制ですが、「ダメもとで応募して見ようかな」と思われたことがある方は多いでしょう。
しかし、いざ募集要項をホームページで見たり電話で問い合わせてみたりすると、法人でなければ応募もできないものが殆どであることに気が付きます。
しかし個人事業主に門戸が開かれているものもありますので、下記リンクを参照してください。
まとめ
個人事業主を長らく続けてきた方なら、もう既に「個人事業の壁」を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
法人化したほうが節税メリットが大きいですし、事業を拡大したいのならば法人化して信用度をアップすべきだといえます。それによって仕事のオファーや従業員の雇用はますますスムーズになるでしょう。
規模の拡大は考えず、ある程度の売り上げで良いのであれば個人事業。
もっともっと拡大して発展したいというのなら法人。事業を発展させる夢をもっているならば、煩雑な手続きや従業員が増えることによる負荷もむしろ励みになるかもしれませんね。
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